加藤諦三教授最終講義

今日は大隈講堂で、退官にあたっての加藤諦三教授の最終講義を聴講してきました。
聴いてきた、というより聴講してきた、と言った方がしっくり来るよな内容でした。


加藤先生は心理学・精神衛生論が専門で、学会理事やらニッポン放送の人生相談のパーソナリティやら500冊の著書やら華々しい経歴を持っているそうだけど、その語り口からは全くそれを感じさせない、等身大のことばで話すとてもすてきな先生だと思います。
もともとは大学1年と3年のときに受けた依存症の授業がとてもおもしろくて、わたしの中ではかなり「癒し系の授業」としてたのしみにしてたのでした。
立て看板できょうの最終講義を知ったときも、ぜったい行こうと思ってました。


今日は、2つ感動したことがありました。
1つはその講義の内容と、もう1つは心理学やらの分野で「先生」と呼ばれることのすごさ。
講義の内容は、今までわたしが聴いたことのなかったようなexcitingなものでした。いまの日本人の心は世界でいちばん病んでいる、と。
経済活動の停滞が心の病の原因なんかじゃない。日本文化に誇りを持って、日本は日本のままでいいのだ、お金よりだいじなものがあるぞ、と考えを改めないかぎりこの病理は治らない。そしてそのためにはトータルな社会政策が必要だ、というスケールの大きいおはなし。心理学と経済学の横断。
これを聴いて思い出したのは、ブータンのGNH(国民総幸福量)。貧しい国でも、みんなが笑顔ならその国はとっても豊かな国だと。これを考えたブータンの王様はほんとうにえらいと思う。そしてそれを受け入れた国民もとても頭がいいと思う。
ほかにも「その場にあった話題を選べない人(今の「KY」の考えとつながるのかな)」とか友達親子にも言及していて、自分にもちょっと思い当たるふしがあったし、聴講のあとは憑きものが取れた気分でした。


もう1つの感動は、大隈講堂で立ち見がいっぱい出るほどの聴衆、鳴り止まない拍手、手渡される花束とフラッシュの嵐を見てて思ったこと。
「先生」って職業はやっぱりすごい。アカデミックな世界でやっていくってことは、「知のチカラ」みたいなもので時代を一歩リードしてくことで、それはなかなかできることではないだろう。
さらに心理学の分野でそれをやるっていうことは、とうぜんその人が信頼がおけて尊敬できる人でないと、とてもじゃないと教えを請いたいという人はいない。
そんな分野でこれだけ多くの人に支持されるってのはほんとうに希有なことだろうと思う。


修論すら書けなくて悩んでいるわたしには遠い世界だけれどw、だいじなことを教えてもらって元気が出た1日でした。